日本の乾燥野菜の歴史
日本の食文化には、独自の食材や調理法があります。その中でも乾燥野菜は、日本独自の保存食として古くから親しまれてきました。長期保存ができる乾燥野菜は、戦争や災害などの時にも重宝されました。
ここでは、乾燥野菜が広く普及した出来事に注目して、日本の乾燥野菜の歴史を紹介します。
奈良時代- 塩漬けや干し野菜の誕生 -
奈良時代には、塩漬けや干し野菜が誕生しました。当時は、生野菜の栽培技術が未熟で、長期保存ができる食品は貴重でした。塩漬けや干し野菜は、乾燥させることによって保存期間を延ばし、食べ物の確保に役立ちました。
戦国時代- 長期保存の常備食として -
戦国時代には、戦乱や災害が頻発し、食糧不足が深刻化していました。大名や武士たちは、領地の食料自給率を高めるため、乾燥野菜の生産を奨励しました。乾燥野菜は保存期間が長く、長期保存ができるため、常備食として重宝されました。主に根菜類やキノコ類が乾燥野菜として作られ、煮物や汁物などで食されました。
江戸時代- 物流の発展と共に一般庶民にも広く普及 -
江戸時代に入ると、物流の発展や人口増加に伴い、乾燥野菜は一般庶民の食卓にも広く普及しました。乾燥野菜は、常備食や旅食としてだけでなく、旬の食材を保存する手段としても利用されました。江戸時代には、乾燥野菜を使った煮物や汁物などの料理が、一般家庭でもよく食べられるようになりました。
明治時代- 洋風食文化の影響として -
明治時代に入ると、西洋文化の影響が入り込み、洋風の食文化が広まっていきました。これによって、乾燥野菜は一時期忘れられがちになりました。しかし、明治末期には、国内の野菜の品質向上や、外国からの野菜の輸入などによって、乾燥野菜の需要が再び高まりました。また、この時期には、乾燥野菜を使った調理方法も改良され、新しい料理が生まれていきました。
第二次世界大戦- 食糧不足の中で乾燥野菜は重宝される -
第二次世界大戦中、食糧不足が深刻化する中で、乾燥野菜は重宝されるようになりました。戦時中は物流の制限があり、野菜が手に入りにくくなったため、乾燥野菜を活用することが求められました。また、兵士の糧食としても乾燥野菜が使用され、乾燥野菜の生産量が急増しました。この時期、乾燥野菜の中でも、主にキャベツやネギなどの葉物野菜が生産され、主食の代わりに食べられました。
戦後- 安定供給から健康志向へ -
戦後、日本は急速な経済発展を遂げ、食料の安定供給が実現しました。乾燥野菜の需要も減少したものの、乾燥野菜は栄養価が高く、便利で手軽に調理できることから、旅行者やアウトドア派の食糧として利用されました。
また、健康志向が高まるにつれて、乾燥野菜の需要も再び増加しています。現在では、乾燥野菜はスーパーマーケットやインターネットなどでも手軽に入手でき、さまざまな料理に利用されています。
長い歴史を持つ乾燥野菜
日本の乾燥野菜は、長期保存ができることから、戦争や災害時にも重宝され、古くから根付いた保存食としての役割を果たしてきました。時代とともに、乾燥野菜の需要や利用法は変化してきましたが、根本的な役割は変わることはありませんでした。現在でも、乾燥野菜は栄養価が高く、手軽に調理できることから、便利な食材として利用されています。
また、最近では、野菜の健康効果が注目されるようになり、生野菜よりも加熱処理した野菜が健康に良いとされることから、乾燥野菜の需要が再び増加しています。加熱処理することで、野菜の栄養素を壊さずに長期保存ができるため、健康志向の人々から注目されています。
日本の乾燥野菜は、長い歴史を持ち、保存食としてだけでなく、旅食や健康食材としても利用されています。今後も、乾燥野菜の需要は増え続けると予想されます。乾燥野菜の保存技術や利用法が進化していく中で、新しい乾燥野菜の料理が生まれることを期待したいと思います。
参考サイト
厚生労働省:健康日本21- 日本栄養・食糧学会 https://www.jsnfs.or.jp/
- 植村直己著『乾物と乾燥野菜の歴史』(農山漁村文化協会、2007年)
- 食糧学会編『野菜学』(朝倉書店、2009年)
- 鈴木賢司著『乾物辞典』(東京堂出版、2010年)
- 「農業・食品工業の歴史」(農林水産省ウェブサイト) https://www.maff.go.jp/j/pr/aff/1701/speaking-02.html