干しなすとは?旨味が凝縮する乾燥なすの魅力と使い方
干し野菜を作るようになってからというもの、野菜の美味しさそのものに目がいくようになった。八百屋さんでお店の人と立ち話など、前はすることもなかった。それが最近ではどうだろう。八百屋さんでは旬野菜の情報を貰い、スーパーに立ち寄る理由は、お酒を買うためでも、割引シールの貼られたお惣菜を物色するためでもない。私が目指すのは野菜コーナーだ。
そんな私にも、特段好きな野菜というものも幾つかある。そのうちのひとつに「なす」がある。居酒屋に行けば必ずなすの煮浸しを注文するほど、なすは私の好物だ。油の吸いが良く、炒めると調味料をよく吸い込み素材の味を引き立たせてくれる。それゆえに、うかつに食べ過ぎるとカロリーも跳ね上がるというわけだ。
そんな時、なすを油で揚げ焼きにする代わりに、干し野菜にしてしまえばよいことに気付いたのだった。
「わぁ!揚げ物もいいけど、このカリカリサクサクもたまんないわね」
私はカラカラに乾燥させたナスをテーブル一面に広げ、歓喜の交じった溜息を吐いた。なすは乾燥させると、その香りが一層強くなり、旨味がぐんと際立つ。そのため、乾燥させた後は冷凍庫で長期保存がおすすめだ。
まるでフルーツを思わせる甘い乾燥なす。イチオシの食べ方は、お味噌汁に入れることだ。他の具材との相性が良いことは言うまでもないが、私はシンプルになすのみのお味噌汁が好きだ。好みの味噌と、なすの相性のいい塩梅を探すのも楽しい作業のひとつだ。
また、乾燥なすを水戻しして使う際その戻し汁ごと美味しく使えるのも嬉しいポイントだ。なすの奥行きのある旨味が溶け出した戻し汁を使って煮物を作るもよし、お吸い物にするもよし、食べ方の幅は広がりを見せる。
私は自家製の乾燥野菜なすをスナック感覚で食べながら、明日は朝からお味噌汁と炊き立ての白米で健康的な朝食を摂ることに決めた。幸いにも有給で3連休だ。こうなればとことん自分の好きなことに時間を費やそうと思う。
「次は何の野菜を買おう?」
そればかりが頭の中を巡っていた。しかし、これだけたくさんの野菜を使って自家製乾燥野菜を作ってきたのだ。今度は野菜の産地に目を向けてもいいかも知れない。産地によって味も食感も香りも違うにきまっている。土壌が異なれば、その土地の風土に合った野菜が育つ。私は新たな視点を手に入れ、作る喜びにまた一つ新しい楽しみを見つけたのだった。
なすという野菜の奥深さ
なすは、日本の食卓において一年を通じて親しまれる野菜です。夏が旬ですが、秋なすも味わい深く、季節ごとに異なる表情を見せてくれます。油との相性が抜群によく、炒め物や揚げ物にすると調味料をたっぷりと吸い込み、ジューシーな味わいに仕上がります。煮浸しや漬物、焼きなすなど、和食の定番としても幅広く使われてきました。
一方で、なすは水分が多く傷みやすいという弱点があります。冷蔵庫に入れても数日でしなびてしまうことが多く、まとめ買いしにくい野菜のひとつです。しかし乾燥させることで、この課題を克服しながら、なすの持つ旨味を最大限に引き出すことができます。
なすを乾燥させると何が変わるのか
なすを乾燥させると、水分が抜けることで味わいに劇的な変化が生まれます。生の状態ではあっさりとした印象のなすが、乾燥によって驚くほど風味豊かな食材に変わります。
香りと旨味が凝縮される
なすを天日干しにすると、水分が抜ける過程で香りが一層強くなり、旨味がぐんと際立ちます。生のなすでは感じにくかった甘みも引き出され、まるでフルーツのような風味を帯びることさえあります。この凝縮された旨味は、調味料に頼らなくても十分に味わい深い一品を作ることを可能にしてくれます。カラカラに乾燥させたなすをそのままスナック感覚で食べると、カリカリ・サクサクとした食感とともに、なすの深い味わいを楽しむことができます。
戻し汁まで美味しく使える
乾燥なすを水で戻す際に出る戻し汁には、なすの旨味がたっぷりと溶け出しています。この戻し汁を捨ててしまうのは非常にもったいないことです。煮物やお吸い物のだしとして使えば、なすの奥行きのある風味が料理全体に行き渡り、いつもとは一味違った仕上がりになります。戻し汁ごと活用できるのは、乾燥なすならではの大きな魅力です。
乾燥なすの作り方
なすの乾燥は、他の野菜と同じく天日干しが基本です。水分量が多い野菜ですが、薄くカットすることでしっかりと乾燥させることができます。
カットと天日干し
なすを水洗いし、ヘタを取り除いたら、5mm程度の厚さに輪切りにします。厚すぎると乾燥に時間がかかるため、薄めにカットするのがポイントです。ザルや干し網に重ならないように並べ、日当たりと風通しの良い場所で天日干しします。セミドライなら半日から1日程度、フルドライにする場合は2〜3日を目安にしましょう。なすは変色しやすいため、酢水に軽くさらしてから干すと色味が保たれます。
保存方法
セミドライのなすは冷蔵で3〜5日、冷凍で2週間程度が保存の目安です。フルドライまでしっかり乾燥させたものは、密閉容器に入れて冷凍保存がおすすめです。冷凍庫で保存すれば風味が長持ちし、使いたいときに必要な分だけ取り出して調理に使えます。
乾燥なすのおすすめの食べ方
乾燥なすは、そのまま食べても、調理しても、さまざまな形で楽しめる万能な食材です。
味噌汁の具材として
乾燥なすが最も力を発揮するのは、味噌汁の具材としてです。お椀に乾燥なすを入れて味噌汁を注ぐだけで、なすの旨味が汁全体に広がり、香り高い一杯に仕上がります。シンプルになすだけの味噌汁にすると、なす本来の風味をじっくりと味わうことができます。好みの味噌との相性を探るのも楽しみのひとつです。
煮物・炒め物
水で戻した乾燥なすは、煮物に使うとだしをたっぷり吸い込み、柔らかくジューシーな仕上がりになります。生のなすよりも味が染みやすく、短時間の調理でも奥深い味わいが楽しめます。炒め物に使う場合は、戻しすぎずに少し芯が残る程度にすると、程よい食感を保てます。ごま油との相性は抜群で、シンプルな味付けでも十分に美味しい一品になります。
なすは食卓に新たな発見をもたらす野菜
なすは馴染み深い野菜でありながら、乾燥させることで全く新しい味わいを見せてくれます。旨味の凝縮、戻し汁の活用、スナック感覚の食べ方など、生のなすでは味わえない楽しみ方が広がります。
日常の食材を少し違った角度から見つめ直すこと。乾燥なすは、そんなきっかけを与えてくれる存在です。次の週末にでも、お気に入りのなすを干し野菜にしてみてはいかがでしょうか。