ドライフルーツとは?健康的だけど、食べ過ぎには注意
私は大学院を修了し、生まれ育った地元で就職した。仕事は地域密着型の出版社でビジネス系の記事を書くライターをしている。大学で経済学を学んだ強みを活かし、金融関係の記事を担当することもある。仕事にはやり甲斐しかない。これ以上の仕事はない、私にしか出来ない仕事をしているという自負だってある。そんな私に、上司からとんでもない辞令を言い渡された。
「後進を育てて欲しい」
その鶴の一声で私は主婦層をターゲットにしたカルチャー系の記事を担当する部署を任されることになったのだ。もちろん私の上にも上司が就くのだが、主に私が中心となり部署を動かすことになった。
「はぁ……」
食堂で溜息を吐く私に、同期の男性社員が笑って私の肩を叩いた。
「出世したんだから溜息なんか吐くなよ。ちなみに、就任初の仕事は?」
彼は笑いながらハンバーグ定食にぱくつく。
「ドライフルーツ」
その言葉を聞いた同僚は思わず喉にハンバーグを詰まらせかけたようだ。
「バカにしてんじゃないわよ」
私はサンドイッチの最後の一口を口の中へ押し込み席を立った。そうして食堂を出ようとした時だ。後ろから私を呼び止める女子社員の声がした。
「あの……今月からよろしくお願いしますっ!ずっと一緒にお仕事したかったんです!私も今月からひとつ連載を任されることになって……」
「そうなの?よろしくね。で、何を書くの?」
「干し野菜です!もう今からワクワクで!」
彼女はそう言うと頬をピンク色に染め嬉しそうにはにかんだ。
「そうなんだ……」
彼女は私に丁重に会釈をするとオフィスの方へ走って行った。
「可愛い後輩ができたってわけね」
私はすぐオフィスに戻り、自分が受け持つことになったドライフルーツの記事に着手した。
「ドライフルーツってそもそも……」この私の無知に答えてくれる文献は山のようにある。ドライフルーツは文字通り、果物を乾燥させて作った食品の総称で、栄養が凝縮されているのが大きな特徴だ。ただ、果物に含まれる糖分も凝縮されているため食べ過ぎには注意が必要だ。
ドライフルーツについて調べていて驚いたのは、自宅でも作ることが出来るということだ。恥ずかしながら、ドライフルーツはスーパーマーケットで買うものだと思い込んでいた。作り方にも幾通りか方法があって……。
「さあて!調べ甲斐がありそうだわ」
私はオフィスの時計が退社時刻5分前であることも構わず、パソコンに向かう背筋をぎゅっと伸ばしたのであった。これが私とドライフルーツをめぐる記念すべき第1日目のエピソード。
ドライフルーツとは
ドライフルーツとは、果物を乾燥させて水分を抜いた食品のことです。乾燥によって果物の持つ甘みや旨味、香りが凝縮し、常温でも長く保存できるようになります。もともとは果物を長期間保存するための知恵として生まれた食文化であり、世界各地で親しまれています。
乾燥させることで果実の味わいは一段と深まり、噛むほどに自然な甘さが口の中に広がります。砂糖や添加物を加えなくても、素材本来の風味を楽しめる点も人気の理由のひとつです。
栄養と糖分の特徴
ドライフルーツの大きな特徴は、「栄養が凝縮されていること」です。水分が抜けることで、ビタミン、ミネラル、食物繊維などの栄養素が生の果物よりも高い密度で含まれます。特に食物繊維が豊富で、腸内環境を整えたり、満腹感を得やすいといったメリットがあります。
ただし、乾燥によって果物に含まれる糖分も濃縮されるため、食べ過ぎには注意が必要です。例えば、りんご1個分をそのままドライにすると、見た目は小さくても糖質量はほぼ同じ。見た目の量で判断すると、知らないうちに摂取量が増えてしまうことがあります。
そのため、毎日少量をおやつや朝食に取り入れるとちょうどよいバランスになります。
自宅でも作れるドライフルーツ
ドライフルーツは、実は家庭でも簡単に作ることができます。スライスした果物をオーブンで低温乾燥させたり、晴れた日に天日干ししたりといった方法が一般的です。最近ではフードドライヤーを使う人も増えています。
作るときに大切なのは「しっかり乾かすこと」。半乾きの状態だと水分が残ってカビが生えやすくなります。また、果物の種類によって乾燥の時間や温度を調整するのもポイントです。みかんや梨のように水分の多い果物はじっくり時間をかけて、りんごのように繊維質の多い果物はやや高めの温度で乾燥させると、風味良く仕上がります。
自家製のドライフルーツは、砂糖や添加物を一切使わずに済むため、安心して口にできる自然なおやつになります。見た目も華やかで、紅茶に浮かべたり、ヨーグルトに混ぜたりと、さまざまな楽しみ方ができます。
ドライフルーツを味わってみよう
ドライフルーツは、果物の甘みや栄養をそのまま閉じ込めた自然の保存食です。
生の果物に比べて持ち運びやすく、少量でも満足感があるため、忙しい日々の栄養補給にも最適です。乾燥というシンプルな工程の中に、食の知恵と自然の恵みが詰まっており、調べるほど奥深い世界が広がっています。