ドライフルーツの使い方そのまま編|少量で満たされるシンプルな食べ方
私の朝食は本来ブラックコーヒーとトーストというワンパターンが何年も続いていた。面倒臭いことが苦手な性分ゆえ、トーストは6枚切りの食パンをただ焼いただけ、ブラックコーヒーももちろんインスタントコーヒーだ。食べることに対する興味が薄いと言えばそれまでだが、それ以上に朝はギリギリまで眠っていたいのだ。そんな私の生活に最近、ちょっとした変化がもたらされている。
仕事でドライフルーツの特集記事を任されたことで、全国各地から美味しいドライフルーツをお取り寄せしているという都合から、私の朝食にヨーグルトが加わった。もちろんドライフルーツを美味しく食べるための試みとして始めたものだ。
ヨーグルトはどこでも簡単に手に入る安価なものを購入している。尚且つドライフルーツに糖度がしっかりあるため、ヨーグルトは無糖のものを選ぶようにしている。
「今日はあんずでいってみるか」
私はキッチン棚にずらりと並んだ瓶の中から、丸くて赤いあんずのドライフルーツが入った大瓶を取り出した。
さっと瓶を開け、中から3粒のあんずを取り出す。そしてそれを使い慣れないペティナイフで食べやすい大きさにカットする。白い滑らかなヨーグルトの上に、半月型をしたあんずたちが並ぶ。
私は記事を書く際の覚書として、ドライフルーツを食べる際は記録用写真を撮っている。
「けっこうオシャレに撮れるもんなのね」
私はデジカメのモニターを確認しながらヨーグルトを口に運んだ。ヨーグルトに甘さがない分、余計にあんずの甘さと酸味が際立っている。さっぱりとした後口が私のお気に入りだ。
「先輩が朝からヨーグルトにドライフルーツを切って入れてるなんて信じられない」
昼休み一緒にオフィスデスクで昼食を摂っていた後輩が驚いて目を丸くした。
「お取り寄せしたドライフルーツがたくさんあるでしょ?だから色んな食べ方を模索中なの」
「ヨーグルト以外にはどんな食べ方が?」
「色々あるけど、最近はもっぱらヨーグルトか、そのまま食べてる。小腹が減った時に少量、ね」
ポイントは少量ということだ。糖度が高く甘味が強いドライフルーツは小腹が空いたときに食べるおやつとして、少量でもちゃんと満足感が得られる優秀アイテムなのだ。
「ふぅん。ズボラだった先輩が、なんだか遠い人みたいじゃないですかぁ……」
そう言いながら後輩はコンビニで買ったシュークリームにぱくついたのだった。
第六話:ドライフルーツの使い方 フルーツティ編|香りで楽しむ贅沢な一杯
ドライフルーツは「そのまま」が意外と優秀
ドライフルーツというと、ヨーグルトに入れたり、お菓子作りに使ったりと、何かしらのアレンジを前提に考えられがちです。しかし実際に向き合ってみると、ドライフルーツは「そのまま食べる」だけでも非常に完成度の高い食品だと気づかされます。
水分を抜くことで甘みや酸味が凝縮されているため、ひと口ごとの満足感が高く、少量でもしっかりとした食べ応えがあります。包丁も火も使わず、袋や瓶から取り出して食べるだけ。この手軽さは、忙しい日常の中で大きな魅力になります。
ヨーグルトと合わせることで見える個性
そのまま食べる延長線上として、最も相性が良いのが無糖ヨーグルトです。ドライフルーツ自体に十分な甘さがあるため、ヨーグルトはあえて甘みのないものを選ぶことで、フルーツの個性が際立ちます。
あんずやいちじくのように酸味を持つドライフルーツは、ヨーグルトと合わせることで後味がよりすっきりとし、朝食にも取り入れやすくなります。見た目にも彩りが加わり、簡単な一手間で気分が変わるのもポイントです。
写真を撮りたくなるほど整った見た目になることも多く、食べる前のひと呼吸が生まれる点も、習慣として続けやすい理由の一つと言えるでしょう。
小腹を満たす「少量」という考え方
ドライフルーツをそのまま食べる際に大切なのは、量を欲張らないことです。生の果物と比べ、ドライフルーツは糖度が高く、味が濃縮されています。そのため、数粒でも十分に満足感が得られます。
仕事の合間や移動中、小腹が空いたときに少しだけ口にする。そうした食べ方は、甘いお菓子を無意識に食べ続けてしまう状況を防ぐ助けにもなります。しっかり噛んで味わうことで、自然と食べるスピードも落ち、満足感が長く続きます。
おやつとしてのドライフルーツ
ドライフルーツをそのまま食べる最大の魅力は、「考えなくていい」ことかもしれません。包装を開ければすぐ食べられ、食べ終わった後の後片付けもほとんどありません。
それでいて、果物由来の甘みと酸味、香りがあり、しっかりとおやつとして成立します。コンビニスイーツのような即効性のある甘さとは異なり、満足感が穏やかに続く点も特徴です。
そのまま食べるからこそ気づくこと
ドライフルーツをそのまま食べ続けていると、果物ごとの違いに自然と敏感になります。同じあんずでも産地や加工方法によって味わいは異なり、食感や香りにも差があります。
アレンジをしないからこそ、素材そのものと向き合える。その体験が、ドライフルーツの奥深さを教えてくれます。
ドライフルーツは、特別な食べ方をしなくても成立する食品です。まずはそのまま、少量ずつ。そんなシンプルな付き合い方から始めてみるのも、ひとつのおすすめです。