ドライフルーツが有名な国はどこ?世界の果物文化を知る
大学時代の旧友で、海外留学を機に向こうで就職した友人が久しぶりに日本に帰国するという知らせをもらった。
「今はどこで?」
「シアトルだけど、来年の春から1年間フィリピン勤務になるの」
私たちはホテルのビュッフェを囲んで昼食を共にしていた。大学時代からアクティブでどんなことにも果敢に挑戦する姿が印象的だった友人の顔が、ほんの少し不安そうに見えた。
「どうしたの?」
私の質問に彼女はまったく覇気のない真顔でこちらを見つめた。
「気が進まないの。行ったこともない国だし……それに……」
「それに?」
「フィリピンってどんな国かイメージ出来なくて。食べ物もよくわかんないし」
私は一瞬ためらったがすぐにバッグの中に持ち歩いているマンゴーのドライフルーツの存在を思い出した。
「これよ!これ!」
私はすぐさま彼女にそれを見せた。
「マンゴーのドライフルーツ?どういうこと?」
私は偶然にも彼女と会う1週間ほど前にドライフルーツ文化の盛んな国について資料を読み込んでいたのだった。彼女が春から赴任するフィリピンはまさにドライフルーツの生産が盛んな国なのだ。
「フィリピンってね、このマンゴーのドライフルーツを多く生産している国なの。果物がそれだけ美味しい国なのね」
私はデザートのアップルパイに添えられたバニラアイスを口へと運んだ。
「フルーツ大国ねぇ」
彼女は私のドライフルーツをじっと眺め、何か思い浮かんだように表情をパッと明るくした。
「そうよね……どんな国にも誇れるものや、胸を張れるところがたくさんあるのよね」
彼女は嬉しそうに笑い、カップの中で冷めきってしまったブラックコーヒーを一気に飲み干した。
ちなみに、彼女が長年暮らしてきたアメリカもドライフルーツ大国と胸を張って言える国のひとつだ。とくにアメリカはドライアップルの生産が盛んだ。アメリカでのドライアップルの需要はなかなかのもので、ナッツやドライベリーと混ぜられ「トレイルミックス」として販売されている。まさに家庭の定番食品なのだそうだ。
「大丈夫よ。あなたなら何処に行っても楽しめるに違いないわ」
「ありがとう!おかげで気持ちがすっと軽くなったわ」
彼女が私を見つめる視線の遠い先に、新生活への期待感が大いに含まれていることは言うに及ばない。
ドライフルーツ文化は世界中に根付いている
ドライフルーツは、世界各国で古くから食文化の一部として親しまれてきました。果物を乾燥させて保存するという知恵は、冷蔵技術のない時代から人々の生活を支えてきた歴史があります。気候や風土によって生産される果物は異なりますが、それぞれの国がその土地ならではのドライフルーツを誇りにしています。
ドライフルーツが有名な国を知ることは、その国の文化や気候、食への向き合い方を知ることにもつながります。世界を旅するような気持ちで、各国のドライフルーツ事情をのぞいてみましょう。
アジアのドライフルーツ大国
アジアには、トロピカルフルーツの豊富さを活かしたドライフルーツの生産大国がいくつもあります。
フィリピン ― マンゴーの一大産地
フィリピンは、世界有数のドライマンゴーの生産国です。フィリピン産のマンゴーは甘みが強く、ねっとりとした食感が特長で、ドライフルーツにするとその濃厚な味わいがさらに際立ちます。日本のスーパーやコンビニで見かけるドライマンゴーの多くがフィリピン産であり、日本人にとって最も身近な海外ドライフルーツのひとつと言えるでしょう。フィリピンでは土産物としても定番で、現地では多彩なフレーバーのドライマンゴーが販売されています。
タイ・ベトナム ― トロピカルフルーツの宝庫
タイやベトナムは、マンゴーに加えてパイナップル、バナナ、ドリアン、ジャックフルーツなど多種多様なトロピカルフルーツのドライフルーツを生産しています。特にタイはドライフルーツの輸出大国であり、世界中にその製品が流通しています。ベトナムではカシューナッツとドライフルーツを組み合わせたミックス商品が人気で、お茶請けとして日常的に親しまれています。
中東・北アフリカのドライフルーツ
中東・北アフリカ地域は、ドライフルーツ文化の発祥地とも言える場所です。乾燥した気候が天然の乾燥条件を提供し、古くからドライフルーツの生産が盛んに行われてきました。
トルコ ― 世界有数のドライフルーツ輸出国
トルコは、ドライいちじくやドライあんずの世界最大級の生産・輸出国です。特にトルコ産のドライいちじくは品質が高く、世界中で高い評価を受けています。エーゲ海沿岸の温暖な気候が、いちじくやあんずの栽培に最適な環境を提供しており、収穫後に太陽の光で自然に乾燥させるという伝統的な製法が今も受け継がれています。
イラン・エジプト ― デーツの本場
イランとエジプトは、デーツ(ナツメヤシの実)の世界最大の生産国です。デーツは中東の食文化において主食に近い存在であり、ラマダン(断食月)の日没後に最初に口にする食べ物としても知られています。何千年もの歴史を持つデーツ栽培は、砂漠の厳しい気候の中で人々の生命を支えてきました。品種も数百種類にのぼり、味や食感、大きさも多種多様です。
欧米のドライフルーツ事情
欧米でも、ドライフルーツは日常的に親しまれている食品です。それぞれの国の食文化に根付いた独自の楽しみ方があります。
アメリカ ― トレイルミックス文化
アメリカはドライアップルやドライクランベリーの生産が盛んな国です。特に特徴的なのが「トレイルミックス」という文化です。ドライフルーツとナッツ、時にはチョコレートチップを混ぜ合わせたこのスナックは、アウトドア活動のお供として生まれましたが、今では日常のおやつとしてスーパーの棚に並ぶ定番商品になっています。栄養バランスに優れ、手軽に食べられることから、オフィスワーカーにも人気があります。
ヨーロッパ ― ワインとチーズとの組み合わせ
フランスやイタリアなどのヨーロッパ諸国では、ドライフルーツはワインやチーズとの組み合わせで楽しまれることが多いです。ドライいちじくとブルーチーズ、ドライあんずとカマンベールなど、ワインのお供としての評価が高く、食卓を彩るエレガントなアクセントとして重宝されています。クリスマスのお菓子や伝統的な焼き菓子にもドライフルーツは欠かせない存在です。
世界のドライフルーツを味わう楽しみ
ドライフルーツが有名な国を知ることで、世界の食文化の多様さに触れることができます。フィリピンのマンゴー、トルコのいちじく、イランのデーツ、アメリカのトレイルミックス。それぞれの国の気候や歴史が反映されたドライフルーツには、単なる食品を超えた物語があります。
日本にいながら世界各国のドライフルーツを味わえる現代は、まさに恵まれた時代と言えるでしょう。次にドライフルーツを手に取るとき、その果物がどの国で育ち、どのように作られたのかに思いを馳せてみてはいかがでしょうか。