干しごぼうとは?香りと旨味を引き出す使い方と乾燥ごぼうの魅力
私の食の好みは意外と古風だ。1番好きな食べ物はその昔、祖母が作ってくれたきんぴらごぼうだ。今はその味を母が受け継ぎ、私はそれで大きくなった。しかし自分で作ろうと思わなかったのは、作る工程の面倒臭さと、作ったところで「あの味」を自分が再現出来るわけがないと思っていたからだ。
しかし干し野菜作りを実践し始めてからというもの、祖母の味をそのまま再現出来なくとも、自分なりにそれに近付けることは出来ると思うようになった。それは野菜のもつ本来の美味しさと、自分で何かを作って食べる楽しみを知ったからだと思う。
私はその日、乾燥ごぼうを使ってきんぴらごぼうを作ることにした。
「お湯で戻してみようかしら」
私は自分で乾燥させた細切りのごぼうをボウルの中に入れ、上からぬるま湯を流し込んだ。ボウルの中でぷかぷかと浮かぶごぼうを見ながら、スマートフォンで次の工程を確認する。15分ほどでごぼうの戻しが完了するため、私はその間に調味料の準備をすることにした。
「自分がこんなに手際良く料理をするようになるなんてねぇ……」
そんなことをひとり呟きながら、私は調味料を小さな器の中に入れて混ぜ合わせた。醤油とみりんの香りがふわりと立ち鼻先をくすぐる。
私がごぼうの乾燥野菜を作り始めた当初は、スナック感覚でそのまま食べていた。それはそれでごぼうの繊維質を感じられて満足していたのだが、乾燥させて日持ちさせられることを知ってからは、切り方を色々工夫しながら、使う用途や食べ方に変化をつけるようになったのだった。そんな時に、祖母のきんぴらごぼうをふと思い出したのだ。母いわく祖母も乾燥させたごぼうを使っていたらしい。その方が旨味が凝縮された状態で作ることが出来るからなのだそう。
フライパンの中で飴色に変化していくごぼうを菜箸で混ぜ合わせながら、合わせ調味料を投入する。フライパンの中でジュウッと音を立て、一気に香ばしい匂いがキッチンに立ち込めた。
「これこれ!この感じを待ってたのよね」
きらきら光るごぼうに白ゴマをふりかけ、あっという間にきんぴらごぼうが出来上がった。
「明日は珍しくお弁当でも持っていくか」
同僚たちが驚いて腰を抜かすに違いないと確信した夜だった。
ごぼうという野菜の魅力
ごぼうは、日本の食卓に古くから根付いてきた野菜です。独特の香りと歯ごたえがあり、他の野菜にはない存在感を放ちます。きんぴらごぼうや炊き込みご飯、汁物など、家庭料理の定番として親しまれてきました。
一方で、下処理の手間や調理工程の多さから、敬遠されがちな側面もあります。ささがきやアク抜きといった作業を思い浮かべると、気軽に使えないと感じる人も少なくありません。それでもなお、ごぼうが長く愛され続けてきたのは、他には代えがたい風味と、料理に深みを与える力があるからです。
ごぼうを乾燥させるという選択
ごぼうは生のまま使うだけでなく、乾燥させることで新たな魅力を引き出せます。乾燥ごぼうは、保存性が高まり、使いたい分だけ戻して使える点が大きな利点です。
旨味と香りが凝縮される
ごぼうを乾燥させると、水分が抜けることで香りと旨味が凝縮されます。加熱した際に立ち上る香ばしさは、生のごぼうとはまた違った印象を与えます。きんぴらや炒め物にすると、その違いがはっきりと感じられます。
下処理の負担が軽くなる
乾燥させることで、アク抜きの手間が軽減される点も見逃せません。細切りやささがきにしてから乾燥させておけば、調理時は戻して使うだけで済みます。忙しい日でも取り入れやすくなるのが、乾燥ごぼうの利点です。
切り方で変わるごぼうの表情
ごぼうは切り方によって、食感や料理との相性が大きく変わります。乾燥させる場合も、この違いを意識すると使い勝手が広がります。
細切り・ささがき
細切りやささがきは、きんぴらごぼうに最適な切り方です。乾燥後に戻して炒めると、繊維感がほどよく残り、噛むほどに旨味が広がります。ごぼうらしさを最も感じやすい形と言えるでしょう。
斜め切り・輪切り
斜め切りや輪切りは、煮物や汁物に向いています。乾燥させることで味が染み込みやすくなり、出汁との一体感が生まれます。食感は柔らかくなり、落ち着いた印象の料理に仕上がります。
乾燥ごぼうできんぴらを作る
乾燥ごぼうの魅力が最も発揮される料理の一つが、きんぴらごぼうです。
戻し方の基本
乾燥ごぼうは、ぬるま湯で10〜15分ほど戻すのが基本です。完全に柔らかくする必要はなく、芯が少し残る程度でも問題ありません。戻し汁には香りが溶け出しているため、捨てずに使うのも一つの方法です。
香ばしさを活かす炒め方
フライパンで油を熱し、戻したごぼうを炒めると、次第に飴色に変化していきます。この段階でしっかりと香ばしさを引き出すことが重要です。醤油やみりんを加えると、一気に香りが立ち、食欲をそそる仕上がりになります。
ごぼうは日常を少し豊かにする野菜
ごぼうは派手さのある野菜ではありませんが、料理の中で確かな役割を果たします。乾燥させることで扱いやすくなり、使い道も広がります。祖母や母から受け継がれてきた味を完全に再現できなくとも、自分なりの形で受け継いでいくことはできます。
乾燥ごぼうは、そんな橋渡しのような存在です。手をかけた分だけ応えてくれるごぼうは、日々の食卓に静かな満足感をもたらしてくれる野菜と言えるでしょう。